モノリシック マニュファクチュール スペシャルコンテンツ
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JOURNAL 09

マニュファクチュールのその先へ。
業界に衝撃を与えた
トゥールビヨンの革新性を
デイリーに楽しむ

普段遣いに格好のシンプル・トゥールビヨン

フレデリック・コンスタントにとって、2023年は2つの節目を飾るダブル・アニバーサリー・イヤーとなりました。

まずは、ブランド創業から35周年を迎えたことです。オランダ出身の実業家であるピーター・スタースとその妻アレッタ・スタースは、旅先で目にしたスイス製機械式時計のクオリティーの高さに感銘を受け、その魅力をより多くの人に届けたいとの思いから、スイス・ジュネーブにフレデリック・コンスタントを創業。1988年のことでした。

創業後は、スイスに受け継がれる機械式時計の伝統を重んじながらも、新しい素材や技術を積極的に取り入れた時計作りを展開し、ブランドは見る見るうちに成長。現在では複雑機構や先進的な機構も自社開発できるマニュファクチュールとなり、世界各国にネットワークを持つグローバルなウォッチブランドへと至っています。

この35年を振り返ると、ブランドの発展に大きく寄与した歴史的な開発がいくつかあります。その一つが、自社で開発・製造したトゥールビヨンムーブメント、キャリバー<FC-980>です。これが2つ目のアニバーサリー。2023年はキャリバー<FC-980>の誕生から15周年の節目となりました。

この2つのアニバーサリーを祝うために、2023年はキャリバー<FC-980>を搭載したいくつかのトゥールビヨンモデルがブランドの節目を彩りました。昨春、ローズゴールド製ケースにダークグレーのダイヤルを備えたモデルで記念すべき年の幕を開け、それに続いて登場したのがここで取り上げる2つのモデルです。

まずは、ステンレススチール製ケースを備えた「クラシック トゥールビヨン マニュファクチュール」です。正統的なラウンドケース、39mm径の控えめなサイズ、そして機能をトゥールビヨンに絞った端正な顔つきと、全体に通底するのはこれみよがしな派手さがない上品なデザイン。シンプルであるが故に際立つのが、仕上げの美しさです。

ソレイユ装飾を施したネイビーもしくはシルバーの文字盤に優雅に映えるのは、ダイヤモンドファセット加工を施したくさび形のインデックスや、やや膨らみをもたせたアルファ時分針。6時位置のハートビートや時計裏面のサファイアガラス製ケースバックからは、面取りやビーディング、サーキュラーグレイン、ポリッシュなど、多彩な仕上げを丁寧に施したキャリバー<FC-980>がのぞきます。美しい仕上げが織り成す上質なシンプリシティーを堪能することができるトゥールビヨンモデルです。

神秘性とラギッド感が魅力の隕石ダイヤル

そして昨年のアニバーサリーを彩ったもう一つのモデルが、プラチナ製ケースにキャリバー<FC-980>を搭載した「クラシック トゥールビヨン メテオライト マニュファクチュール」です。

ダイヤル上でひときわ目を引く独特のテクスチャーは、宇宙からアフリカのナミビアに飛来した隕石(メテオライト)によるもの。メテオライトという名称も神秘を感じさせる素材ですが、じつは鉄分を多く含むため時計の文字盤として使用するには高度な加工技術を要します。

そのプロセスは、まずはもろく崩れやすいメテオライトを完全にフラットで滑らかなディスクに切り出し、欠けやひびがないかを入念にチェック。その上で、酸化による腐食を抑え、自然なグレーの輝きを与えるためにルテニウムコーティングを施し、最終的な厚みを0.5mmに抑えるというものです。こうして完成したダイヤルは一つひとつ異なる表情を持つため、世界限定35本のこのモデルは全てオリジナルピースと呼ぶに値するものです。

そしてこのモデルのもう一つの見どころが、ムーブメントに施されたハンドメイドの仕上げです。プラチナ製ケースにメテオライト製ダイヤルという、かつてないエクスクルーシブなモデルを製作するに当たり、フレデリック・コンスタントはムーブメントの仕上げにも最高水準を求めました。炭やすりを用いた面取りや、ハンマーとパンチによる槌目仕上げ(打痕模様を施す仕上げ)、メテオライトの風合いを再現したブリッジやトゥールビヨンケージなど、たった1つのブリッジの仕上げにも、2~3日間におよぶ作業時間を費やす」仕上げには随所に職人のクラフツマンシップが息づいています。  

貪欲な姿勢がマニュファクチュールの格を上げる

これらのモデルに搭載されたキャリバー<FC-980>は、ブランド初の自社開発トゥールビヨンムーブメントとして歴史に名を残すだけでなく、フレデリック・コンスタントというブランドの認識を一変させるほどの役割を演じました。

改めて触れると、トゥールビヨン機構とは地球の重力によって生じる精度誤差を低減する機構のことです。精度の要となる脱進機を円形のケージに載せ、そのケージごと一定の速度で回転させて重力の均一化を図るという複雑な機構で、製作には高度な技術が求められます。21世紀初頭、このトゥールビヨンは複雑機構の花形でした。各ブランドがこぞってトゥールビヨンを発表し、トゥールビヨンを作ることが一つのステータスであるかのような様相を呈しました。

そうした時代の中で、フレデリック・コンスタントも2008年に「マニュファクチュール トゥールビヨン」を発表します。このモデルのために開発されたキャリバーFC-980は、自社開発ならではの数々の新機軸が盛り込まれました。

時計の精度や持続時間を向上させるシリコン製のアンクルとガンギ車を備えた脱進機、時計師が行うケージの調整の手間を低減するバランス調整機構、そしてケージの上に備わる秒針をケージごと停止させ、秒単位での時刻合わせを可能にする機能(ハック機能)などがそれに当たります。なお、ハック機能はケージに触れて物理的にブレーキをかける仕組みが一般的ですが、フレデリック・コンスタントはギアを介して緩やかに停止させる独自の設計を考案。機械に負担の少ない機構を採用しました。

1988年のブランド創業から20年、マニュファクチュール・ムーブメントを初めて発表してからわずか4年でのことです。老舗が並み居る高級時計の世界ではまだ新進ブランドだったフレデリック・コンスタントが、複雑機構のトゥールビヨンを、それも既存機構の模倣ではなく多くの新機軸を盛り込んだ先進的なトゥールビヨンを開発したことは、業界に大きなインパクトを与えると同時に、マニュファクチュールの技術開発力の高さを広く知らしめたのです。

たとえ新進であろうと、後塵を拝する立場に甘んじることはありません。新しさを受け入れることを恐れずに、イノベーティブな精神で“手の届くラグジュアリー”を創出するのがフレデリック・コンスタントの時計作りです。キャリバー<FC-980>はその一つのシンボル的なムーブメント。革新性に満ちながら、普段遣いに適した手頃感もまた大きな魅力です。ケージの軽やかな動きとともに、革新のマインドをデイリーに楽しんでみてください。