モノリシック マニュファクチュール スペシャルコンテンツ
SHARE twitter facebook
JOURNAL 07

常識を覆す圧倒的なパフォーマンスを実現。
斬新な発想とシリコン技術で
機械式時計の未来を拓く

先進的なシリコン素材にいち早く着目

高品質なスイス製腕時計をより多くの人に届けることを理念とするフレデリック・コンスタントは、2004年発表の手巻きキャリバー<FC-910>を皮切りに、自社製造ムーブメントとそれを搭載したモデル、すなわちマニュファクチュール コレクションの開発にも注力してきました。マニュファクチュール コレクションの特徴は、まずは高機能や多機能といった機械式時計の奥深い魅力を堪能できること。そしてもう一つが、シリコン素材のハイパフォーマンスを享受できるモデルが充実していることです。

シリコン素材は機械式時計の精度・性能を向上させる先進的なマテリアルとして、2000年代の中頃から一部のトップメーカーを中心に採用され始めました。その特性は多岐にわたります。100%の耐磁性を有していること、温度変化を受けにくいこと、比重が小さいため重力の影響を受けにくいこと、摩耗や摩擦に対する耐性が優れること、そのため部品への注油が不要であることなど、機械式時計のあらかたの弱点を克服すると同時に、メンテナンスフリーへの大きな一歩となるイノベーティブな素材として注目を集めました。

フレデリック・コンスタントは2008年にこのシリコン素材を初めてマニュファクチュール キャリバーに採用します。機械式ムーブメントの精度を司る脱進機のガンギ車をシリコン製とし、その脱進機を搭載した自社製のトゥールビヨン・キャリバー<FC-980>を発表したのです。シリコン素材がまだ一部のトップメーカーの専売特許のように思われていた時代に、創業から20年余りのフレデリック・コンスタントがシリコン製ガンギ車を実機化したことはまさに異例であり、マニュファクチュールの技術水準の高さを知らしめることになりました。

以降、フレデリック・コンスタントはシリコン素材の加工・成形技術に磨きをかけ、初採用から13年後の2021年に、その一つの集大成とも呼べる開発が結実します。それがシリコン製オシレーター(振動子)です。

ポイントは一体型、コンパクト、量産向き

機械式時計の精度を司るのは脱進機ですが、その脱進機に隣接して時計の等時性を制御するのが調速機です。直径わずか数ミリのヒゲゼンマイの伸縮により、輪状のテンプが規則正しい往復運動を繰り返し、2つの爪が付いたアンクルとガンギ車を介して輪列を制御しています。この調速機の基本的な設計は今から300年も前に考案されたもので、現在もほぼ全てのムーブメントでこの設計が採用されています。

もはや改良の余地がない完成形だと思われた調速機の設計を根底から見直し、全く新しい発想と長年培ってきたシリコンの技術を動員して刷新したのが、フレデリック・コンスタントのシリコン製オシレーターです。

このオシレーターは、時計の機構製造に長けたオランダのフレクサス社と共同で開発が進められました。およそ3年を経て完成したシリコン製オシレーターは、次世代型の調速機と呼びたくなるほど革新性に満ちています。端的に言えば、通常はヒゲゼンマイやテンプをはじめとする26のパーツで構成される調速機を、2つの調整用ウエイトを含む一体型のシリコン製オシレーターで代替したのです。

この一体型のオシレーターにより、精度を左右するテンプの振動数が飛躍的に高まりました。従来のムーブメントは毎時2万8800振動(毎秒8振動)が標準的でしたが、その10倍となる毎時28万8000振動(毎秒80振動)へと至ったのです。この超高振動の性能を最大限生かすために、フレデリック・コンスタントは新しい輪列を備えたキャリバー<FC-810>を開発しました。30個目のマニュファクチュール・ムーブメントとなったこのキャリバーは、シリコン素材と一体型オシレーター、それらに最適化された輪列によりエネルギーの伝達効率も上がり、超高振動でありながら80時間という長時間のパワーリザーブを確保しています。

また、オシレーターのサイズを従来のテンプと同等の直径9.8mm、薄さ0.3mmに収め、量産可能な形状へと突き詰めた点もポイントでした。これによりベースムーブメントの設計を大きく変更せずに実装が可能となり、製造コストを抑えることにつながったのです。

ブランドの歴史だけでなく、機械式時計の歴史も画するこのシリコン製オシレーターを搭載したキャリバー<FC-810>を腕時計として製品化するにあたり、フレデリック・コンスタントが選んだのはスリムライン コレクションです。2021年に発表した「スリムライン モノリシック マニュファクチュール」は、クル・ド・パリ装飾が施されたダイヤルにローマ数字インデックス、ブレゲ調の針と、用いられた意匠はすべてクラシックでありながら、それらのディテールのアレンジにより全体の印象は現代的に洗練されています。そしてダイヤルの6時位置の開口から未来的な光沢を放つのがシリコン製オシレーターです。よく目を凝らすとオシレーターの微細な振動が見て取れることでしょう。クラシック調のデザインとハイテクな調速機構の融合は、伝統に敬意を払いつつも常に未来を見据えているブランドの姿勢を物語るようです。

「スリムライン モノリシック マニュファクチュール」は、ステンレススチールケースからホワイトとネイビーのダイヤルの2型、18Kローズゴールドのケースからホワイトダイヤルの1型がラインアップされています。そして革新的な機構を備えながら、価格が良心的に抑えられている点がフレデリック・コンスタントらしいところ。時計史を画するほどのイノベーションが軽やかに楽しめる、高級時計の世界でも極めてまれなタイムピースです。